(出典) 朝日新聞朝刊/2023年05月10日
太陽光と風力でつくった電気の受け入れを大手電力が一時的に止める「出力制御」が、
大手10社のうち8社のエリアまで広がっている。 これまでは電気の使用量が比較的少な
い地域に限られていたが、今年は大都市圏の中部も実施し、東京と関西も備え始めた。
再生可能エネルギーを使い切れずにムダにしているのに等しく、普及に向けた課題となっ
ている。
➡参照/RE1033_2023.05.10.html = 送電網遅れ
電気は発電量と使用量のバランスが崩れると、周波数が
乱れて大停電につながるおそれがあり、大手電力の送配
電部門が調整している。 使用量より発電量が多くなると
きに受け入れを止めるのが「出力制御」だ。 休日で大量
の電気を使う工場が稼働せず、晴れて太陽光発電が多く
なる日が想定される。 冷暖房需要が減る春や秋が特に
多い。
国のルールでは、まず二酸化炭素(CO2)の排出量が
多く、出力を上げ下げしやすい火力を限度まで減らし、
余った電気を他の地域に送る。 次にバイオマス、太陽光
・風力の順で再エネを抑える。 出力を簡単に調整できな
い原発は最後となる。
中部と北陸は4月に初めて出力制御をした。
中部の送配電網は名古屋市を中心に工場集積地にも広がり、電気の使用量は多い。
それでも制御せざるをえなくなったのは、太陽光が急拡大したからだ。 5年前と比べて
6割ほど増えている。
出力制御は、太陽光の導入が早かった九州が、本土では2018年に初めて実施。 再エネ
の急増で、22年春以降に他の地域にも広がった。 これまでに、九州、中部、北陸のほか、
北海道、東北、四国、中国、沖縄の各電力地域で実施。 大型連休中も沖縄と北海道を除く
6社で行われた。
東京や関西も今年、需要が急激に落ちた場合などを想定し、出力制御をする可能性を
公表した。
自然エネルギー財団の斉藤哲夫・上級研究員は「出力制御しなければならない割合が増
えれば、事業者は収益の見通しが立たなくなり、投資をやめる判断も出てきてしまう。
欧州に比べて対策が遅く、再エネの拡大を進めるうえでも急ぐ必要がある」と指摘。 「オン
ラインで制御できる仕組みを使って発電量を細かくコントロールすれば、制御される量を減
らせる」と話す。
(岩沢志気、内藤尚志)
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