原発安全対策費 6兆円超
本社調査 電力11社 揺らぐ経済性
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(出典) 朝日新聞朝刊/2024年08月20日
東京電力福島第一原発事故後の原発の安全対策費が、電力11社の合計で6兆円を超える
ことが朝日新聞の調査でわかった。 これまでの想定より対策費が割高になるケースも出始
めており、原発のコスト面での優位性は大きく揺らいでいる。
朝日新聞は2013年から毎年、新規制基準で義務づけられた地震や津波などの安全対策
費について、原発を持つ電力全11社に尋ねてきた。 今年7月のアンケートの回答では中国と
北海道の電力2社で前年から増額し、11社の総額は6兆1508億円だった。
中国電は今年12月の島根原発2号機(松江市)の再稼働をめざす。 建設中の同3号機も
原子力規制委員会で審査中で、前年から約2200億円増の約9千億円となった。
北海道電は、前年から396億円増え、2618億円と回答。 泊原発(北海道)の防潮堤の
設置に向けて準備工事をした。
これまでに再稼働したのは、関西、四国、九州の3電力の6原発12基。 1基あたりの安全
対策費を各社の回答から計算すると、設置が義務づけられているテロ対策施設も含めて2千
億円程度だった。
一方、規制委の審査に通り、これから再稼働しようとしている原発の安全対策費は割高だ。
今年11月ごろの再稼働をめざす東北電力女川原発2号機(宮城県)は約7100億円。
島根原発は単純計算で1基約3千億円で、テロ対策施設の設置費用が精査中のため、さらに
膨らむのが確実だ。
なぜ再稼働済みの原発より割高なのか。 東北電は、想定する津波や地震の厳しさが要因
となっている可能性をあげる。
再稼働済みの6原発は想定する最大津波が10メートル未満で、最大想定の地震は1千ガル
に満たない(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)。
一方、女川原発は最大想定の津波高さが23.1メートルで、海抜29メートルの防潮堤を
設置。 島根原発も11.9メートルの津波を想定し、海抜15メートルの防波壁を設けた。
元原子炉メーカー技術者の佐藤暁さんは「津波と地震対策の違いが費用に与える影響は
大きい」と語る。 防潮堤の建設費は1千億円規模と大きいという。
配管や設備の耐震補強も、工事が複雑になりやすく、コストは大きいという。 審査中の
原発は津波や地震の想定が厳しいところも多いため、佐藤さんは「今後も対策費が高い原発
が出てくる可能性はある」とみる。
政府の21年の電源別のコスト検証では、規制委に審査を申請した原発を対象に安全対策
費を見積もり、1基約2千億円程度としたうえで原発新設時のコストを試算していた
(福地慶太郎、矢田文)
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